メタバースのビジネス活用事例｜メリット・デメリットも解説

新しい仮想空間として注目を集めるメタバースは、ビジネスにおいて新しい可能性を開く技術の一つです。近年、多くの企業がメタバースを活用し、これらの事例が注目を集めています。

今後もメタバース市場は成長していくと予測されており、ビジネス分野においても欠かせない存在となる可能性が高いです。

この記事では、メタバースをビジネスに活用する方法を解説し、活用事例やメリット・デメリットについても言及します。

メタバースを導入したビジネスを検討している方は、ぜひ参考にしてください。

ビジネスへの活用が注目されているメタバースとは？

メタバースとは、インターネット上に構築された仮想空間のことです。メタバースの「メタ」は「超越した」という意味の言葉で、バースは「ユニバース（宇宙）」のこと。この2つを組み合わせた造語が、メタバースです。

メタバース内のバーチャル世界では、自分自身を「アバター」と呼ばれるキャラクターに置き換えて操作します。アバターとして他のユーザーとコミュニケーションをとり、イベントに参加したり、ビジネスを行ったりと、幅広い活動が可能です。

新規経済圏の獲得やビジネスにおけるアイデアの創出や解決策の発見など、新しい可能性の開拓のため、様々な業界でメタバースを導入する企業が増えています。

ただし、メタバースは発展途上の技術であるため、リスクがあることも理解しておきましょう。

メタバースについては、こちらの記事でも詳しくまとめています。併せて参考にしてください。

メタバースをビジネスに活用した6つの事例

では、実際にメタバースをビジネスに活用した事例をご紹介します。

ご紹介するのは、以下6つの事例です。

• イベント開催や出展
• メタバースへの広告出稿
• バーチャルオフィスを構える
• NFTアイテムを制作して販売
• メタバース上での店舗運営
• メタバース上の土地を購入して運用

イベント開催や出展

メタバース上では様々なイベントが開催されています。こうしたイベントを自社で開催し、集客してみてはいかがでしょうか。

メタバースプラットフォームの「Cluster（クラスター）」や「VRChat」では、オリジナルのワールドを作成し、そこで「展示会」「ライブ」「セミナー」などのイベントを開催できます。

こうしたイベントに集客することで、商品やサービスの販売、新規顧客の獲得やイメージアップへの効果も期待できるでしょう。

集客力が重要となりますが、過去の事例では、バーチャルマーケットというVRイベントで100万人の集客を記録したとのデータもあります。

また、このようなメタバース上のイベントに出展するというのも1つの方法です。出展することで、自社のサービスを広め、多くの方に認知してもらえる可能性があります。

メタバースへの広告出稿

メタバース空間においては、仮想空間上に存在するオブジェクトや建物に広告を掲載することができます。これにより、多くの参加者が集まるイベントなどでは、広告を視覚的に楽しむことができ、大きな費用対効果を生む可能性もあるでしょう。

現時点では、メタバース内の広告自体はそこまで多くありません。しかし、メタバースに広告を出すことによって、新たな層からの支持や認知向上に繋がる可能性も期待できます。

3DオブジェクトやVR動画など、広告形態も様々です。

バーチャルオフィスを構える

コストの見直しができると注目されているのが、オフィスのバーチャル化です。メタバース上にオフィスを構えることで、以下のようなメリットを生み出せます。

• 物理的なオフィスの維持や移転費用などのコストを削減できる
• 世界中からアクセス可能となり、グローバルなビジネスの拡大にも繋がる
• リモートワークやフレキシブルワークなど、ワークスタイルの多様化が可能になる
• データや情報をより安全に保護できる

バーチャルオフィスを構えることで、スタッフはメタバース上に出勤できます。コロナ禍などの非常事態でも影響を最小限に抑えることができ、事業の継続に貢献します。

バーチャルオフィスとして利用できるサービス

オフィスをバーチャル化できるサービスには、以下のようなものがあります。

• Horizon Workrooms
• Mesh for Microsoft Teams

「Horizon Workrooms」は、2021年にMeta（旧Facebook社）がリリースしたバーチャルオフィスです。実際に同じ空間にいるような感覚で会話でき、会議や業務が行なえます。独自の技術により、話しかけられている方向や距離が分かるようになっているのも特徴です。

「Mesh for Microsoft Teams」は、Microsoftがリリース予定のコミュニケーションツールです。

会議や交流、業務を行うことをコンセプトとしたサービスで、オンラインでのスムーズなコミュニケーションが目的とされています。

NFTアイテムを制作して販売

メタバース上では、NFTアイテムを作成して販売する企業も存在します。

販売しているのは、主にアバターが着用する服やアクセサリーなどです。

メタバース内でアバターの容姿は自由に変更できるため、ユーザーは自分の好みに合った個性的なデザインを欲する傾向にあります。自分でNFTを制作できる方は少ないため、こうしたNFTアイテムの需要は期待できるでしょう。

すでに、NIKEやH＆Mなどのメタバースに参入しており、高額でNFTアイテムが取引されることも。NFT制作は各メタバースプラットフォーム、またはNFTマーケットプレイスから行えますので、試してみてください。

NFTについては、こちらの記事で詳しくまとめています。併せて参考にしてください。

メタバース上での店舗運営

一部のメタバースプラットフォームはバーチャルショップを提供しており、そこに出展することで、商品やサービスを販売することができます。

バーチャルショップを導入することのメリットは、以下の通りです。

• 店舗を24時間365日運営できる
• 人件費や家賃等のコストを削減できる
• お店の雰囲気や世界観を自在に変えられる

従来のECサイトでも買い物自体は可能ですが、実際にお店に行ったような気分を味わうことはできません。その点、メタバース上での店舗ならお店に行った気分を味わい、楽しみながら商品やサービスを選べます。

また、企業が独自にメタバースを開発し、店舗運営する事例もあります。

例えば、三越伊勢丹はVRアプリ「REV WORLDS」をリリースし、メタバース上での運営をスタートしました。実際に商品の購入も可能で、注目を集めています。

こうしたメタバース上での店舗運営は、ECとは違った新しいオンラインストアとして普及していくことでしょう。

メタバース上の土地を購入して運用

メタバースプラットフォームの中には、メタバース内の土地を売買できるプラットフォームが存在します。このような土地を購入し、運用することでも収益化が可能です。

土地の売買ができる代表的なメタバースプラットフォームには、以下の2つがあります。

• Decentraland
• The Sand box

メタバース空間の土地はNFT化されて販売されており、購入することで自分の好きなように使用する権利を得られます。これは、現実世界の土地の使い方とも似ていますね。

メタバースの土地を利用したビジネスには、以下のような方法があります。

• イベントを開催する
• 土地所有者の限定イベントに参加する
• 店舗を出店する
• 土地に広告を表示する

メタバースの土地の購入方法、使い方については、こちらの記事で詳しくまとめています。併せて参考にしてください。

メタバースをビジネスに活用するメリット・デメリット

続いて、メタバースをビジネスに活用するメリット・デメリットを解説します。

活用するメリット

メタバースをビジネスに活用するメリットは、以下の通りです。

• 新規経済圏の獲得
• 場所を選ばないため生産性が向上する
• コロナ禍などでも事業を継続できる

新規経済圏の獲得

メタバースを活用したビジネスは、まだまだ新しい取り組みです。そのため、どの企業も始めていないようなビジネスや、競争率の低いビジネスなども存在します。

そういった分野で、メタバースを活用した新しいビジネスモデルを展開すれば、新規経済圏の開拓が可能です。

また、メタバース上で、既存のビジネスに関連したサービスを展開することでも、新たな収益源に繋がる可能性があります。顧客データや市場データなどを分析していけば、新しいビジネスチャンスの発見、新規顧客の獲得にも繋がるでしょう。

場所を選ばないため生産性が向上する

メタバースはインターネット上の仮想空間であるため、物理的な場所に依存せずに仕事ができます。その結果、生産性の向上にも期待できるでしょう。

例えば、メタバースを利用したバーチャル会議やリモートワーク、データ共有などが可能です。

従来のコミュニケーションツールはモニター越しでの会話となるだけでしたが、メタバースを利用すれば、アバターを介して自分自身の身振り手振りを伝えることが可能になります。

企業の規模の大小に関わらず、生産性の向上が期待できるでしょう。

コロナ禍などでも事業を継続できる

コロナ禍において、事業の継続が困難となった企業も多いでしょう。しかし、メタバースを活用すれば、コロナ禍の影響を受けつつも事業の継続ができる可能性があります。

例えば、メタバース上にバーチャルオフィスを構えれば、現実世界のオフィスへの出社が困難な場合でも、バーチャルオフィスでの仕事が可能です。

また、メタバース上にオンラインショップを出店する、オンラインサービスを提供する、といったビジネスモデルなら、事業を継続できます。

活用するデメリット

一方で、メタバースのビジネス活用には、以下のようなデメリットも存在します。

• まだまだ活用事例が少ない
• メタバースの普及に対する懸念
• 設備投資や管理にかかるコスト

まだまだ活用事例が少ない

メタバースを活用する企業が増えてきていることは事実ですが、まだまだ活用事例が多いとは言えません。

そのため、以下のようなリスクが生じる可能性もあります。

• 可視化されていない未知のリスクに不安を感じ、メタバースを使用する企業やユーザーが減るリスク
• メタバースに関する知識やノウハウが限られているため、効果的な活用ができないリスク
• 市場規模が小さくなった場合にビジネスチャンスが減るリスク

ただし、これらのリスクは、今後活用事例が増えていくことで解消されていくと考えられています。

メタバースの普及に対する懸念

メタバースが一般の方に受け入れられ、今後普及していくかどうかについては、様々な意見があります。

主な意見は、メタバースの付加価値が高く、ビジネスや社会に大きな影響を与える可能性があると考えられるため、普及が進むというものです。

しかし、一方では技術的な問題や適用範囲の制限、プライバシーやセキュリティ上の問題から、普及が遅れる可能性があると考える方もいます。

今後メタバースが普及していくためには、ビジネスモデルの構築や法整備なども必要であり、それらの整備が待たれます。

設備投資や管理にかかるコスト

リアル店舗やリアルオフィスに比べると微々たる金額ですが、メタバースの導入にも設備投資や管理コストが少なからず発生します。

具体的には、メタバースの導入には以下のような設備が必要です。

• VRヘッドセット（VRゴーグル）
• コントローラーなどのハードウェア
• パソコン
• サーバー

企業で利用する場合はそれなりのスペックが必要となるため、人数分を揃える場合は大きな支出となるでしょう。

また、必要となる管理コストには、ハードウェアの保守やメンテナンス、ソフトウェアのアップデートやアップグレードなどが挙げられます。

とはいえ、リアルビジネスと比較すると圧倒的に安いコストで始められ、継続しやすいのも事実です。費用対効果を考えると、投資対象としては非常に魅力的と言って良いでしょう。

メタバース導入におすすめのメタバースプラットフォーム3選

メタバースを導入するなら、メタバースプラットフォームを使用するのが一般的です。企業でも使用されている代表的なプラットフォームには、以下のようなものが挙げられます。

• Cluster（クラスター）
• VRChat（VRチャット）
• The Sandbox（サンドボックス）

Cluster（クラスター）

運営会社	クラスター株式会社（日本）
ゲーム内通貨	クラスターコイン（仮想通貨ではない）
参加に必要な費用	無料
日本語対応	あり
対応デバイス	PC（Windows・MAC） スマホ（Android・iPhone）
公式HP	https://cluster.mu/

▼おすすめポイント

• ユーザー同士の交流をメインとしたプラットフォーム
• 無料で参加できる

Clusterは日本で開発されたメタバースアプリで、ユーザー同士の交流をメインとしたプラットフォームです。

スマホ・PCのどちらにも対応しており、アカウント登録をすれば誰でも無料でメタバースを体験可能で、メタバース内ではイベントなども定期的に開催されています。

Cluster内ではバーチャル観光地やバーチャル展覧会、おすすめのカフェやBARなども公開されており、まるで現地に行ったような感覚を味わえますよ。時折ニュースなどで話題になる「バーチャル渋谷」が公開されていることでも有名です。

また、メタバース内では独自のクラスターコイン（仮想通貨ではない）を使用してアイテムを購入でき、そのアイテムを他のプレイヤーに贈ることも可能です。日本人にも馴染みやすく、幅広い楽しみ方ができるプラットフォームと言えるでしょう。

VRchat（VRチャット）

運営会社	VRChat Inc.（アメリカ）
ゲーム内通貨	―
参加に必要な費用	無料
日本語対応	なし
対応デバイス	Windows
公式HP	https://hello.vrchat.com/

▼おすすめポイント

• 法定通貨を使用して経済活動が行える
• 動物などのアバターも使用できる

VRchatは、ユーザー同士の交流をメインとしたプラットフォームです。メタバース内ではアイテムの売買が可能で、経済活動も行えます。

ゲーム内通貨は発行されていませんが、日本円やドルなどの法定通貨を使用して経済活動を行えるのが特徴です。仮想通貨のレートよりも価値が分かりやすい点が魅力ですね。

また、定期的にイベントなども開催されており、過去には大手企業主催イベントの会場としても話題になりました。

グラフィックのクオリティが高いのも特徴で、人間以外にも動物などのアバターを使用してコミュニケーションが取れます。オリジナルも作成可能です。

The Sandbox（サンドボックス）

運営会社	The Sandbox（香港）
ゲーム内通貨	SAND
参加に必要な費用	無料
日本語対応	あり
対応デバイス	PC（Windows・MAC）
公式HP	https://www.sandbox.game/jp/

▼おすすめポイント

• 遊びや経済活動が行えるプラットフォーム
• 土地を購入し、建築やアイテムの販売などが可能

The Sandboxはプレイヤーが自由に目的を決めて、遊びや経済活動が行えるプラットフォームです。日本で有名なマインクラフトに似ていますね。

プレイヤーは自分自身のワールドや、アイテムなどを作成可能です。作成したアイテムは他のプレイヤーに販売することもできます。

また、メタバース内の土地やアイテムがNFTとなっており、プレイヤーはメタバース空間上の土地（LAND）を購入し、建築も可能です。

スクウェア・エニックスからも多額の出資を受けており、日本語にも対応。今後も注目度は高まっていくことでしょう。

上記の他にも、たくさんのメタバースプラットフォームが存在します。こちらの記事で詳しくまとめていますので、併せて参考にしてください。

導入支援サポートの利用も検討を

実際にメタバースを導入しようと思っても、一体何から取り掛かればいいのか分からないという方も多いと思います。そこでおすすめなのが、導入支援サポートの利用です。

導入支援サポートとは、メタバースの導入に必要な技術や知識を提供し、企業がメタバースをスムーズに導入するための支援を行うサービスのこと。

導入支援サポートは様々な形態で提供されており、企業に合わせた導入プランを提案してくれますよ。

具体的に受けられるサポートは、以下のような内容です。

• メタバース導入に必要な技術・知識の提供
• メタバース導入に関するコンサルティング
• メタバース導入に関するシステム構築・カスタマイズ
• 導入後のトレーニングや運用サポート

上記のようなサポートを受けることで、企業はメタバース導入をスムーズに進められます。また、導入後でもサポートが受けられるため、安心してメタバースを活用できるでしょう。

ただし、導入支援サポートの利用には費用がかかりますので、各サービスで予算に合わせた選択を行ってください。

メタバースに特化した導入サポート

導入サポートを利用するなら、メタバース・VRの専門のサポートに依頼するのがおすすめです。

メタバース・VRの専門サポートには、以下のようなサービスがありますので検討してみてください。

MOGURA NEXT	リサーチ・コンサルティング・開発サービスなど
VR法人HIKKY	企画・制作・運用・導入サポートなど
Cyzy Space	展示場や店舗などVRブースの制作・導入

まとめ

近年、メタバースはビジネスの分野でも注目されており、参入企業が増えつつあります。

以下は、メタバースをビジネスに活用した6つの事例です。

• イベント開催や出展
• メタバースへの広告出稿
• バーチャルオフィスを構える
• NFTアイテムを制作して販売
• メタバース上での店舗運営
• メタバース上の土地を購入して運用

メタバースを活用することで、以下のようなメリットがあります。

• 新規経済圏の獲得
• 場所を選ばないため生産性が向上する
• コロナ禍などでも事業を継続できる

一方で、メタバースのビジネス活用には、以下のようなデメリットがあることも理解しておきましょう。

• まだまだ活用事例が少ない
• メタバースの普及に対する懸念
• 設備投資や管理にかかるコスト

メタバース市場は今後も成長していくと考えられています。メタバースを導入することで、ビジネスにおける新たなチャンスに繋がるかもしれません。

メタバースのビジネス活用が気になっている方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。