マルチバースとは何か？簡単に解説｜メタバースとの違いや映画作品も紹介

メタバースが注目を集めるようになった近年、似た言葉である「マルチバース」との混同が増えてきています。

メタバースとは「仮想空間」を意味しますが、マルチバースは「現実世界とは別に、複数の平行する現実や宇宙が存在するという理論物理学の説」を意味する言葉です。マルチバースはアメリカの作品に多く取り入れられているため、すでに目にしたことがあるかもしれませんよ。

この記事では、マルチバースについて簡単に解説し、メタバースとの違いやマルチバースを取り入れた映画などの作品もご紹介します。

この記事を参考に、ぜひマルチバースについて理解を深めてください。

マルチバースとは何か？分かりやすく簡単に解説

冒頭文でもお伝えしましたが、マルチバースとは「現実世界とは別に、複数の平行する現実世界や宇宙が存在するという理論物理学の学説」です。

簡単に言うと、「自分が存在する現実世界の他にも、複数の世界が存在するという考え方」になります。

例えるなら、「高校に入学してサッカー部に入った自分がいる世界とは別に、高校に入学して野球部に入った自分のいる世界、陸上部に入った自分のいる世界も存在している」という考え方がマルチバースです。

アニメなどに出てくる「パラレルワールド」も、マルチバースの一例と言えるでしょう。

マルチバースは造語

英語では「multi/マルチ（複数）」と「universe/ユニバース（宇宙・世界）」を合成した造語で、「multiverse/マルチバース」と表記されます。

また、日本語では「多元宇宙」などと訳されることも多いです。

マルチバースの考え方は、科学や宇宙論だけでなく、映画や小説、アニメなどのフィクション作品にも多く取り入れられており、物語の舞台やストーリーの展開を豊かにする要素として人気があります。

代表的な2つの仮説

マルチバースには複数の理論が提唱されていますが、代表的なのは以下の2つです。

• 泡宇宙論
• 多世界解釈

これらの仮設は、それぞれ異なるアプローチで複数の宇宙や現実を説明しています。

泡宇宙論

泡宇宙論は、インフレーション宇宙論から派生した「宇宙が沢山の「泡」のような小さな宇宙からできている」という考え方です。

インフレーション宇宙論とは、「ビッグバン直後の宇宙が短期間かつ急激に、指数関数的に膨張した」という理論のこと。この急激な膨張により、様々な大きさや形の「泡」ができたと考えられています。

それぞれの「泡」は違う性質を持つ宇宙で、星が沢山ある宇宙もあれば、星が全くない宇宙もあるかもしれません。

また、自分たちが住んでいる宇宙と同じような法則がある宇宙もあれば、まったく違う法則がある宇宙もあるというのが、泡宇宙論です。

ただし、これらの泡（他の宇宙）は、実際に見ることができない場所にあるため、本当に存在しているかどうかを確認する術はありません。あくまでも泡宇宙論は、宇宙の成り立ちについて考えるための仮説の一つとして捉えられています。

多世界解釈

多世界解釈は、自分たちの住んでいる宇宙の他にも、沢山の異なる「世界」が存在しているという考え方です。

この理論は、1957年に観測物理学者のヒュー・エヴェレット氏によって提唱されたもので、量子力学の分野から生まれました。

量子力学では、物事が確率的に起こると考えられています。

例えば、コインを投げると表が出る確率と裏が出る確率があり、自分たちが認識できるのはどちらか1つのみです。

しかし、多世界解釈では、人々が選択を行うたびに世界は分岐して、異なる可能性が実現する別の世界が生まれると考えられています。つまり、コインを投げた時に、表が出る「世界」と裏が出る「世界」の両方が発生するということです。

そして、このようにしてできた無数の世界は、並行して存在しているものの、互いに影響を与えないとされています。

多世界解釈は、物理学の中でまだ完全には証明されていませんが、世界のあり方や現象について考える興味深い視点を提供している理論の1つです。

「マルチバース」と「メタバース」の違いは？

続いて、「マルチバース」と「メタバース」の違いについて解説します。2つの言葉は似ているものの、それぞれ異なる意味を持つため、間違えないようにしましょう。

メタバースとは？

メタバースの「メタ」は「超越した」という意味の言葉で、バースは「ユニバース（宇宙）」のこと。この2つを組み合わせた造語が、メタバースです。

メタバースをひと言で表現すると「インターネット上の仮想空間」となります。

メタバース内のバーチャル世界では、自分自身を「アバター」と呼ばれるキャラクターに置き換えて操作することが可能です。そのアバターが他のユーザーとコミュニケーションをとったり、イベントに参加したり、ビジネスを行ったりと、幅広い活動ができます。

近年では、旧Facebook社が社名を「Meta」へ変更するなど、メタバースが世界に広がりつつあることが伺えますね。日本企業の多くもメタバースへの参加を表明しており、これからさらに注目が集まることが予想されます。

メタバースでは何ができるのか、始め方などについては、こちらの記事で詳しくまとめています。併せて参考にしてください。

「マルチバース」と「メタバース」の違い

マルチバースとメタバースの違いを、以下にまとめました。

	マルチバース	メタバース
概念	無数の宇宙や世界の存在	インターネット上の仮想空間
関連分野	物理学、哲学	テクノロジー、ゲーム、ビジネスなど
主な特徴	いくつか有力な仮説が提唱されている	アバターを使ったコミュニケーション
活用・関連する分野	研究、映画、ドラマ、小説など	ビジネス、ゲーム、教育など

上記からも分かるように、メタバースは「インターネット上の仮想空間のこと」で、マルチバースは「現実世界とは別に、複数の平行する現実や宇宙が存在するという理論物理学の説」のことです。

また、マルチバースは「考え方」ですが、メタバースは「デジタル技術のため実際に活用できる」という点も違いと言えるでしょう。

マルチバースはアメリカの作品に多い

マルチバースの概念は、アメリカの映画やアニメ、コミック、小説などの作品に多く登場します。

なぜアメリカの作品に多いのかというと、アメリカのエンターテイメント業界が、新しいアイデアや面白いストーリー展開を追求することが好きだからです。

マルチバースを取り入れれば、様々な世界やキャラクターを組み合わせて、独創的なストーリーや驚きの展開を提供できます。そのため、クリエイターや視聴者にとって魅力的なテーマとなっているのです。

こうした背景から、アメリカではマルチバースを取り入れた作品が多くなっています。

マルチバースを描いたアメリカの映画やドラマ作品

最後に、マルチバースを描いたアメリカの映画やドラマ作品をご紹介します。

ご紹介するのは、以下の作品です。

• 映画｜スパイダーマン:スパイダーバース
• 映画｜ドクター・ストレンジ
• ドラマ｜アローバース
• 映画｜アベンジャーズ・エンドゲーム

映画｜スパイダーマン:スパイダーバース

公開	2018年
ジャンル	アクション、CGアニメ作品
製作国	アメリカ

スパイダーマン:スパイダーバースは、2018年に公開されたアメリカのアニメーション映画で、マルチバースの概念が取り入れられています。

この作品は、少年マイルズ・モラレスがスパイダーマンの能力を持つことになり奮闘していく中で、別次元で活躍するスパイダーマン達が集結し、共に悪に立ち向かうストーリーです。

これまでのスパイダーマンとは異なる新たな魅力を見せた作品で、独特の世界観を表現しました。

スパイダーマンファンはもちろん、初めての方でも楽しめる作品となっています。

映画｜ドクター・ストレンジ

公開	2022年
ジャンル	アクション、スーパーヒーロー映画
製作国	アメリカ

ドクター・ストレンジ／マルチバース・オブ・マッドネスは、2016年に公開されたMARVEL作品「ドクター･ストレンジ」の2作品目です。マルチバースの概念を取り入れた、壮大なスケールで展開されるスーパーヒーロー映画となっています。

この作品は、元天才外科医でありアベンジャーズ最強の魔術師となった主人公のドクター・ストレンジが、禁断の魔術を使って異なる世界を巡るストーリーです。

無限の可能性が存在する「マルチバース」と呼ばれる無数のパラレルワールドを舞台に、予測不可能な展開が繰り広げられます。

ドラマ｜アローバース

公開	2012年
ジャンル	アクション、スーパーヒーロー、SF
製作国	アメリカ

アローバースはアメリカの人気ドラマシリーズで、DCコミックスのキャラクターを基にした複数のテレビシリーズが共通の世界観で繋がっている作品群の総称です。

アローバースは「ARROW/アロー」をはじめとする複数のシリーズで構成されており、無数の並行世界から成り立つマルチバースの世界観を描いています。

アローバースを構成している作品は、以下の通りです。

• ARROW/アロー
• The Flash/ザ・フラッシュ
• SUPERGIRL/スーパーガール
• レジェンド・オブ・トゥモロー
• ブラック・ライトニング
• バットウーマン
• Superman & Lois

これらの作品は同じ世界を共有しており、異なるシリーズのキャラクター達が交流したり、共闘したりすることで、物語の繋がりが楽しめます。

ただし、アローバースの「ARROW/アロー」を全て見てしまうと、「The FLASH/フラッシュ」や「SUPERGIRL/スーパーガール」のネタバレとなってしまうため、時系列順に視聴することをおすすめします。

アベンジャーズ・エンドゲーム

公開	2019年
ジャンル	アクション、アドベンチャー、スーパーヒーロー映画
製作国	アメリカ

アベンジャーズ・エンドゲームは、2019年に公開されたアベンジャーズをベースとしたスーパーヒーロー作品です。

この作品では、過去の異なる時点にタイムトラベルすることで、現在の世界における悲劇的な出来事を修正しようとするストーリーが展開されています。

マルチバースの概念とは異なる部分もありますが、異なる世界や時間軸の概念が重要な役割を果たしていることから、マルチバースに関連する作品として扱われることがあります。

まとめ

マルチバースとは、現実世界とは別に、複数の平行する現実世界や宇宙が存在するという理論物理学の説のことです。

マルチバースを簡単に言うと、「自分が存在する現実世界の他にも、複数の世界が存在するという考え方」になります。アニメなどに出てくる「パラレルワールド」も、マルチバースの一例と言えるでしょう。

近年、注目を集めている「メタバース」と「マルチバース」とでは、以下のような違いがあります。

	マルチバース	メタバース
概念	無数の宇宙や世界の存在	インターネット上の仮想空間
関連分野	物理学、哲学	テクノロジー、ゲーム、ビジネスなど
主な特徴	いくつか有力な仮説が提唱されている	アバターを使ったコミュニケーション
活用・関連する分野	研究、映画、ドラマ、小説など	ビジネス、ゲーム、教育など

マルチバースは、アメリカの映画やドラマ、アニメなどに取り入れられることが多く、これまでにも様々な作品がリリースされています。

マルチバースを理解するにあたって、まずはマルチバースを題材とした作品を視聴してみるのもおすすめです。