今とは違う時間軸。
恐獣が栄える辺境の地に、ニンゲンの里がありました。
気位の高い女王ラーサが治める、うたかたの里。
人々は恐獣と共存し、小国ながらも平和な生活を送っていました。
あるとき、里は甲獣の襲撃を受けました。
この地域では見慣れない昆虫種です。
甲獣は、その大きな身体で人々の住家を潰し、ニンゲンに有害なレヴィセンスを
羽から振りまき、里をめちゃくちゃにしました。
国を守るために立ち上がったのは、ラーサの第一王子・アキ。
アキは恐獣を従え、甲獣相手に戦いを挑みました。
戦いは長期化しました。
一体退けても、すぐにまた別の甲獣が襲ってくるからです。
次から次へと現れる甲獣……。
その原因を突き止めるため、アキは一人、甲獣たちの神が棲むと言われる
シンジュが森へと旅立ったのでした。
アキが国を空けてしばらくして、甲獣の攻撃はやみました。
けれど、アキは戻ってきません。
女王ラーサは、愛する息子の帰りを待ちました。
気が遠くなるほど長い月日を待ちました。
数多い王子の中でも、勇敢で聡明なアキは女王にとって特別でした。
自分の跡を継ぐのはアキしかいない。
アキはきっと帰ってくる。
全てが解決しアキが国へ戻ったら、王位を継承させようと心に決めていました。
しかし、シンジュが森の捜索隊からもたらされたのは非情な報告でした。
アキはホシフリの里の娘レコによって殺されたというではありませんか。