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後編:第5章「オーボエ奏者ハインツ・ホリガー」

: 少し話は変わるけど、ハインツ・ホリガー(世界的に有名なオーボエ奏者。また指揮者、現代音楽の作曲家でもある。)に憧れていたこともある?

: 憧れっていうか、尊敬はすごいしていて、あの人は生まれながらの音楽家なんで、考えても仕方がないと思う。
それとあの人はいい音楽家だなって思った。
それはなぜかというと、うちのオーケストラに振りに来たことがあるの、指揮者で。
そのときに、僕は吹いててソロが出てきたときに、とてもね、尊重してくれるの。
吹いていたら吹かしといて、周りを僕の方に向けてくれて、なおかつ僕が吹いていることを彼は楽しむ。
それで僕は、彼の本当のところを見た気がした。
で、終わった後に来て、『あなたほんとにいい音楽家だよね』って言う余裕があるのね。
『冗談じゃない、僕は、あなたがいい音楽家だと思っている』と言ったら、『いやいや、僕はすごく楽しめたと』というのを聞いて、こいつすげえでかいヤツって思った。 言われた瞬間にね、そういうやつになりたいと思った。

: それはなかなかできない。

: できないと思う。
で、あの人のお弟子さんに聞いたら、なかなか首を立てにふらない。
手放しでは絶対ほめない。
『俺はできないけれどさ、お前だったらできると思う』となるのよ。
音楽家ってそういうキャパシティの広さもなくてはいけなくて、マンツーマンになったときに、『君の吹く音に遊ばしてもらったよ』っていう感じだったのね。
『あー、俺よかった、ここまでやっててよかった』と、『あんたの弟子じゃないけど、あんたに納得してもらえるんだったら俺全然言うことないよ』っていうようなね。

: そうでしょうね、あれだけの人に。音楽って一人で作ってるんじゃないもんね。

: で、もちろん、なんか、言わずもがなに導いていけるのも指揮者だから、ワンランク上のところから
実は動かしているっていうのだと思うのね。
ただ僕はまだそんな領域に達していないから、『こっちもいいよ、そっちもいいよ。』と言ってる。
まだそこから。大事にしてあげることが、プレイヤーが信用してくれる。

: 指揮する側が信用してるから、相手も信用する。

: うん、多少もし傷があったとしても、僕らみんな持ってるわけだからプレイヤーとして。
だから全然そんなこと気にしないでって言う気持ちでいっぱいなのね。
そんなこと人間だから当たり前で、それは聴いてるお客さんには聞き苦しいところがあるかもしれないけど、みんなベストを尽くそうと思ってるわけで、ここでヘタにやろうなんて誰も思わない、もう善意でしかないのよ。
良い職場だなと思う。
誰も足引っ張ろうって考えない、できにくい、成立しにくいから、善意と愛情をもって、お互いにがんばろうぜって、やってるわけ。

: それはうらやましいな。そういう仕事。選んでよかったですね。

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