Story
『今』とは違う時間軸。 大半が砂漠化した地球では、巨大な堅い甲羅を持つ節足動物達が繁栄しておりました。 その影で暮らすニンゲンは、彼らを”甲羅を持った獣「甲獣」と呼び、森の神として崇めておりました。 そして、200年に一度、その年に15歳の成人を迎える者一人を”贄”として甲獣さまに捧げることで、その土地に住むことを許されていると伝え言われておりました。
「ホシフリの里」。 ”贄”を捧げた夜に流星群をみられたことから名付けられた王国には、一人の元気な姫がおりました。 その名は「レコ」。 レコ姫は小さな頃、甲獣達の住む「シンジュが森」で迷子になった事がありました。 「男の子と逢った気がするの。素敵な石のブレスレットをしていて、「キレーだね」って言ったらとっても驚いた顔していたけど・・・、優しく笑ってそれをくれたの。これすごいのよ。これをしているとみんな(甲獣)の気持ちが何となく分かるの。」 そう言っては今日もブレスレットを輝かせ、里の者が恐れて入らないシンジュが森へ好んで遊びに行くのでした。
里の人々はレコ姫のブレスレットを見て大変に驚きました。 あれは“贄”に選ばれた者に届けられるもの。 なぜ姫さまがそんなものをなさっているのか? 次は姫さまの番なのでしょうか? けれど、誰もそのことをレコ姫には言えません。 また、いくら綺麗だと思っても、「自分も欲しい」と羨ましがる者はおりませんでした。
レコ姫が晴れて15歳の成人を迎えたこの年、ホシフリの里に疫病が流行りました。 次々と未知の病気に伏せる人々。 しかし、そんな中でもレコ姫だけは元気なのです。
人々は噂しました。 甲獣様はレコ姫を求めているのではないか? 成人の年になられたレコ姫さま。 “贄”のブレスレット。 そしてこの流行病。 200年の風習はまだ生きておったのか。 「甲獣さまがレコ姫さまを出せと言っているのか。」 「呼んでおるのじゃ。」 「差し出さなければならぬのか。」 「里のためじゃ。」 騒ぐホシフリの里の人々の声を無視できないと思った王は悩み、震える声でレコ姫に言うのでした。 「・・・シンジュが森の、甲獣神様の元に、行ってはくれまいか。」
レコ姫は、二つ返事で承諾しました。 「里のみんなを治せるなら!」 そう言うとレコ姫は「森で友達になった」という金色の甲獣に乗り、レスレットを眺めながら、ふっと思うのでした。 「昔にも病気が流行ったことがあったって聞いた事がある。確か”贄”が遅れた時とかなんとか・・・。」
「そんなことより!」 レコ姫は森の奥に急ぐのでした。神様ってどんなだろう。 あの男の子が神様だったらいいのにな、と思いながら。